私は、純白で穢れのない白という色があまり好きではないのだけれど、
グカ・ハンの作品を読み終わってからずっと
無色の静謐で凛とした印象の作品に触れたいと思っていた。
『すべての、白いものたちのの』には「白木蓮」という文章がある。
春、香りがあって純白で大きな花を咲かせる白木蓮(ハクモクレン)は
自然への愛を含み、高貴であることや、高潔で荘厳な心だとかを花言葉に持つらしい。
大学の同期が亡くなった後、教室から見える丘に白木蓮の樹を二本植えた。
何年も過ぎた後、生命ー再生ー復活を意味するその花咲く木の下を通り過ぎながら、彼女は思った。あのとき自分たちはなぜ、白木蓮を選んだのだろう?
闇を抱いて燃え上がる、がらんどうの、白い、炎をたち―—三月につかのま咲いて散る二本の白木蓮は、それなのだろうか? *1
空白と白、黒と炎が、bhleg-へと帰すように
生と死の弧が、「生命ー再生ー復活」を辿るように
白木蓮の白が、咲いて散るさまが美しくて…
ただ、この作品の中心にあるものは白木蓮でも白く燃え上がる炎ではない。
ハン・ガンの言葉は5種類の白い紙に印刷され、
母の乳、産着、白絹、壽衣といった白が、常に生と死の間に介在し、
しなないで、生きていってほしいという祈りを
もしかしたら、受け止めることができるかもしれないと思わせてくれるような作品。
*1:ハン・ガン『すべての、白いものたちの』斎藤真理子訳、河出書房新社、2020年、103頁。